本件は重大な問題である。 なぜなら、誤った経済政策による「貧困」は当人の生命だけでなく、 犯罪を助長し社会に多大な影響をもたらすからである。
デフレ下で増税の口実になる経済指標を意図的に用いることは、大量殺戮と変わらない。 このような状況がメディアで取り上げられず、放置されている日本社会の異常性に危機感を持つべきである。
デフレギャップとは?
デフレギャップとは、日本国内の供給と需要のどちらが大きくなっているかの指標である。
単純に例えると、ある工場でチョコレートを1日10個生産できる能力があるとする。
お金があり、かつチョコレートを買いたい人が8人しかいなければ、デフレギャップはマイナス2であり、12人いればプラス2になる。
上記を円通貨圏(主に日本国内)に広げたものと考えてよい。
【よくある指摘】 日本のGDPギャップは±0前後を推移しており、デフレを脱却している
【反論】 デフレギャップは少なくともマイナス3%で見積もる必要がある
以下のグラフを見ると、リーマンショックやコロナ禍のような特殊な状況を除いて、デフレギャップがプラスになっている時期もあるが「デフレを脱却した」と判断することはできない。
なぜなら、
つまり、例えば、
本来であれば、工場の稼働率100%(最大概念)を潜在GDPとすべきである。
『ニッポン放送 2023年9月27日』(高橋洋一)
「需給ギャップがプラスに転じた」は嘘
飯田)いまは個人消費や設備投資も持ち直しており、需要と供給のバランス、「需給ギャップがプラスに転じた」というようなことも書かれていますが。
高橋)あれは嘘ですね。
飯田)嘘。
内閣府では潜在GDPを計算する際、2%低く見積もる ~実際より2%高くなる
高橋)
(中略)
高橋)いままでも。ただ、今年(2023年)の最初にGDP改定があり、需要の方の計算を少し変えて1%くらいサバを読んだから、いまはGDPギャップの計算において3%ほどサバを読んでいるのです。
需給ギャップは回復せず、まだ3%くらい残っている
高橋)
【よくある指摘】 潜在GDPの「平均概念」が国際標準なら問題ないはず
【反論】 そもそも潜在GDPの「平均概念」が国際標準である根拠はない
潜在GDPの解釈について、研究者によって世界標準は「平均概念」の潜在GDPと述べたり、「最大概念」の潜在GDPと述べたり、まちまちである。
IMFの潜在GDPは「インフレを加速させない最大の生産量」で「最大概念」と解釈できるが、欧米は「平均概念」が主流とされている。
政府が潜在GDPの解釈を「平均概念」に切り替えたのは、竹中平蔵経済財政担当相の頃の「平成13年版経済財政白書」からである。
日銀は、その後も5年ほど潜在GDPの解釈は「最大概念」のままであったが、「GDPギャップがマイナスのままではゼロ金利を解除できない」という無理やりな理由で「平均概念」に切り替えたとも言われており、少なくとも日本が「国際標準に合わせる」という動機で
「平均概念」切り替えたと断定はできない。
「GDPギャップ」過信の危うさ(ニッセイ基礎研究所 経済調査部長 斎藤 太郎 2006年7月24日)
潜在GDPの概念にも大きく分けて2通りの考え方がある。ひとつは、労働、資本をフル稼働させた場合のGDP(=最大概念の潜在GDP)、もうひとつは労働、資本が過去の平均的な稼動状態にある時のGDP(=平均概念の潜在GDP)である。
日銀はこの春、潜在GDPの再推計を行ったが、その際に潜在GDPの概念をそれまでの「最大概念」に基づくものから、国際的に主流となっている「平均概念」に基づくものに変更した。
【よくある指摘】 欧米で潜在GDPの解釈が「平均概念」なら日本も「平均概念」で問題ないはず
【反論】 デフレの状況で潜在GDPを「平均概念」で解釈するのは問題である
欧米では実情として潜在GDPが「平均概念」でも問題視されていない。なぜなら普通の経済政策をやっている国は緩やかなインフレを起こしながら経済成長を図る(平均が95%稼働なら、潜在GDPも95%になる)ため。
しかし、日本のようにデフレを放置する非常識な国で潜在GDPの「平均概念」を採用してしまうと、上記のとおり、
「正確性に欠ける」という問題がある。
(工場の平均稼働率が50%なら、60%になっただけで「デフレギャップはプラスになった」と判断されてしまう)
この辺の問題は『潜在GDP 最大概念』で検索すると警鐘を鳴らす研究者が多数出てくるため、参照されたい。